2017年 03月 08日
早春も、京都 ~金地院 「鶴亀の庭」「八窓席」
南禅寺塔頭 金地院 鶴亀(かくき)の庭園 庭の前面に広がる白砂は宝船を、また海洋を表す と。 白川の砂に、陽射しを受けて光る雲母が また美しい景色でした。 作庭 小堀遠州。
この白砂の大海を前に おそらく一日中でも、縁側に座っていたくなる。おおらかで、のびやか。
そして、ご覧のとおり、ほぼ 常緑樹。これを永遠ととらえるか、単調と、とらえるかは それぞれの解釈、というところでしょうが。 周辺南禅寺、永観堂界隈 もみじの名所でもありますけれど 常緑できめこんだこちらのお庭もまた、別の意味で印象的でありました。不老長寿と子孫繁栄・祝儀の庭。 中央には 三尊石、かたや(右手)鶴の石、 こなた(左手)亀の石。
特に、鶴の石。くちばしのように見える石をさがしてきたというのも粋。そして、左手の長方形の見事な平面石は東照宮の遥拝石とか。
「蓬莱石組の背景、大刈込は 幾重にも折りかさなる山々で、深山幽谷を現す。」
鶴亀の庭を眺めている縁側は、金地院・方丈(重要文化財)。方丈、八窓席は予約にて見学が可能です。
(ここからは、撮影禁止。荷物もロッカーへ。)
襖絵・狩野尚信、「布金道場」と大書した額・山岡鉄舟、 そして、拝見したかったのが 長谷川等伯の 「猿猴捉月図 老松」 ちょうど午前の良い時間。光線がほどよく畳に反射、レフ板のように。 襖絵のテナガザルの伸ばした手の先、水面に映る まんまるなお月さま。 かすかな陰影に、想像力をさらに膨らませてみる、猿猴捉月図。 とろうとするのに届かない、禅問答にもなりそうなテーマですね。 おさるさん、お顔のパーツがすべて中心。そこがまた、キュートなのです ♪
茶室 八ツ窓の席も小堀遠州作、です。京都三名席の一席。六窓、なのにどうして八窓と名づけられたか。 八、という数にみえるこだわり。 床の間の造り、躙り口貴人口の様子、天井の高さの違い、障子に映る景色 等々。ご説明いただくので 見るべきポイントが絞れます。 壁面は以前、足立美術館 お茶室寿立庵で拝見したような、じゅらくかと。あれは菜種油、だったと記憶していますが、お伺いすると こちらは不明とのこと。 侘び寂びの空間をながめつつ、往時の茶会を偲ぶことができました。
方丈に先立ち 院内にある東照宮(重要文化財)。家康の遺髪と念持仏を祀っているそうです。荘厳、渋いのひとことにつきる葵の御紋の拝殿脇には 早咲きの河津桜でしょうか。京都に遺る唯一の権現造り様式だそうです。権現造りというのははじめて拝見したかもしれません。
こちらの天井画は狩野探幽筆の鳴龍。 三十六歌仙の額は土佐光起筆。いずれも、拝見できます。 周囲の雰囲気と相まって、独特の空間でした。 鶴亀の庭にある、遥拝石から こちらを拝むのですね。
金地院は 湯豆腐の順正のお向かいでもありました。 今まで何度も前を通ったと思うのですが ... 「京都の名庭」でも未訪だった「鶴亀の庭」。ようやく拝見することができました。 その上、琳派や等伯の名画にも出逢えます。 時期的なこともありましょうが、本当に静かです。 方丈縁側で名庭を前に 自分と向き合える貴重な時間。
そして、そして 順正で湯豆腐。勿論、予約していました。 八窓席、と どちらを先に予約したかは ... それはやっぱり !
■金地院 南禅寺塔頭
本尊 地蔵菩薩
← 明智門
◆地下鉄東西線「蹴上」駅下車、徒歩7分
◆市バス「南禅寺・永観堂道」下車、徒歩10分